菊と玄関先に並んでチャイムを押すと、元気のいい返事と共にフェリシアーノが飛び出してくる。
 今日は12月25日、言わずと知れたクリスマスだ。菊とフェリシアーノに知り合ってからというもの、こうして誰かの家に集まってささやかなパーティーをするのが毎年恒例となっている。3人が毎年交替で自分の家に他の2人を招いて持て成し、プレゼントを交換したり取り留めのない話をして過ごす。今年は順番から言えば俺の番の筈なのだが、フェリシアーノが強引にその役を持っていってしまった。
 何故かは──何となく察しがついている。去年の今頃、俺はこの街にはいなかった。遠い場所で誰とも連絡を取らず過ごしていた。期間は2年程。その間にあったクリスマスは3回。聞いたところによればその間も2人でこの恒例行事を続けていたらしいのだが、2人と3人では大違いなのだとか。
 故にフェリシアーノは1週間も前から何やら準備を始め、菊も平時と変わらないように見せ掛けながら何事か企んでいるという訳だ。心遣いは非常に嬉しいながら、嫌な予感を禁じ得ない。特に菊の方は。
 上がって上がってと促されて屋内に入ると、ふわりといい匂いが漂ってくる。匂いだけで何かを当てるような芸当は出来ないが、夕食に使うのだろうということは推測出来た。フェリシアーノは毎回料理に手を掛けるものの、今回はひとしおのようだ。

「いい匂いがしていますね、フェリシアーノ君。 料理の仕込みですか?」
「うん、兄ちゃんにも手伝ってもらって昨日から煮込んでるんだー」

 楽しみにしててね!とフェリシアーノは笑顔を弾けさせる。それにつられて俺の口元も少し緩む。
 また同じ学校──とは言え大学であるからそう顔を合わせる機会はない──に通い始めてから半年以上が過ぎた。こんな風にパーティーと称して3人だけで集まるのは、俺の帰宅を祝して開かれたパーティー以来のように思う。あの時もフェリシアーノと菊はかなり気合いを入れていて、俺はその意気込みに圧倒されっ放しだった。気圧されて根掘り葉掘り聞かれた出先での生活のことを一から十まで喋ってしまったことは、誰にも言うまい。ギルベルトには零したような気がするが、まぁ、彼の場合は特例だ。既に俺がどう過ごしていたかは知っているし。
 そんなギルベルトは今、あちらもあちらで恒例行事となっているクリスマスパーティーをしている筈だ。メンバーはいつもの悪友、フランシスとアントーニョ。馬鹿騒ぎをして近所に迷惑を掛けたり、酔い潰れたりしなければいいのだが。場所がフランシスの家なだけに家主が止めに入ってくれるとは思う。しかし止めに入って本当に止められるやら、それは定かではない。後でねちねち愚痴を言われるのは誰だと思っているのだろうか、あの兄は。
 …当然俺か。よもや、分かっていながらやっているんでは、ないだろうな。そうならば俺も少し考えがあるぞ兄さん。
 いもしない人に向かって威圧感を発しかけたところで、いつもの団欒場所、リビングに到着する。それぞれ好きなように好きな位置に納まるうちに、俺は知らず寄っていた眉間の皺を出来るだけ緩めておく。そんなつもりはないのだが、俺のその表情というのは怖いらしいので。
 フェリシアーノが淹れてくれたココアを飲みながらほっこりしていると、実に何気ない様子で菊が口を開いた。

「ルートヴィッヒさん、私ずっと聞きたかったんですけど…その後ギルベルトさんとの仲はどうなんですか? というか実際のところどこまでいってるんですか?」

 妙に目を輝かせて成された問いに、俺は危うくココアを噴き出すところだった。そうはならなかったものの、変なところに入って噎せる。一体何を言い出すんだ、いきなり。しかもどこまで、などと──そんなもの最後までに決まっているだろう!
 と言ったら思う壷な上、更なる期待に目を輝かせて突っ込んだ質問をされるのだろう。普段は慎ましやかだというのに、どうしてこう、時としてアレな方向に飛翔するのだろうか。聞いて楽しい話でもあるまい、そもそも理解されることもそうないだろうに。男同士、それに加えて兄弟ともなれば尚のこと。
 だが菊の向けて来る視線はどこまでも期待に煌めいていた。あぁ知っていたさ、知っていたとも。菊がその手のことに関して、偏見を持っていたり白眼視をしるなんてことは、ないことくらい。だがいつから三次元まで範疇に含まれるようになった。二次元だから許されるんじゃあなかったのか。

「あー…何と言うか」
「安心して下さい、原稿のネタにはしませんから。糧にはしますけど」
「菊も俺も心配だから聞きたいだけだよー?」
「お前もなのか!」

 聞き捨てならないことをフォローのように口にする2人に、俺は頭痛を禁じ得ない。大切な友達であるのだが、果たしてそのままその位置付けに置いていていいのか疑問になってきた。かと言ってどんな位置に持っていけばいいのかは分からないが。
 深い溜め息を吐き、俺は頭を整理する。俺とギルベルトとは、どこまでも何も、家を出る前から最後まで至っている。合意の上で、という条件をつけるならば否ながら。ならば帰ってからはどうかといえば…ノーコメントにしておこうか。ただそう、必死で抱き付いてくるギルベルトは実に愛らしかった。という訳でその後の仲もそこそこに上々だ。
 が、この2人に口に出して説明するのはとても遠慮したい。菊、テーブルの下でメモの準備をしてるのは俺からしっかり見えているぞ。フェリシアーノ、そんな純度100%の目で見るんじゃない、頼むから。
 さてどう言うべきか。何と言おうと結局知りたいことを聞き出されてしまう気がするが、自分から晒け出すこともないだろう。慎重に言葉を選ぶ、俺の様子を2人はじっと見ている。菊はキラキラした眼差しで、フェリシアーノはほわほわした眼差しで。
 口下手な俺が回りくどい言い方を考えるのを放棄するのに、そう時間は掛からなかったように思う。


◆ ◇ ◆


 上手い具合に色々と情報を聞き出され、しかもそれを菊にきっちりメモされ、何というクリスマスだと俺は頭を抱えていた。恥ずかしいにも程がある。生暖かいによによを向けるのはいい加減に止めて欲しい。そろそろ裸締めを食らわせたくなってきた。
 ゆらりと威圧感を仄めかすと、フェリシアーノはヴェッと鳴いて笑みを引っ込める。だが菊はまだによによ笑いを続けていた。む、強かな。人を食ったような表情の菊と威圧感を発する俺とが、暫く睨み合うような形になる。
ヘタレとしてその名を馳せているフェリシアーノは、5秒もしないうちに逃げ出すことを決定したらしかった。俺夕ご飯の支度してくる!と告げたが早いか、その姿は扉の向こうへ消えてしまう。菊との睨み合いを続けながら腕時計に目を遣ると、確かにそろそろ夕食の時間だ。俺はどれだけ喋らされていたのだか。
 菊のメモ用紙が何枚消費されたのか調べれば分かる気がするが、色々と怖いから止めておこう。変に刺激して更に突っ込んだことを聞かれても困る。その手合いの質問を上手く交わせる技量が俺には余りない。友達相手であると尚更に。
 俺の視線に気付いたか、菊がさり気なくメモを鞄の中に仕舞い込む。ああさらば俺とギルベルトの赤裸々な閏事情。出来るなら死ぬまでにこの手で焼却処分してやりたい。いや、いつか必ずしよう、ぎりぎり法律の範囲内の方法で。きっとそれが皆の為になると俺は信じて疑わない。

「そんなに怖い顔しないで下さいよルートヴィッヒさん。大変美味しいネタをどうもご馳走様でした」
「…ネタにはしないんじゃなかったのか」
「おっと恐れ入りますすみまっせーん★ 言葉の綾ですよ言葉の綾」
「原稿明けでテンションが若干おかしいんだよな? なぁ菊、頼むからそう言ってくれ…」
「いやですねぇ、次に備えて絶賛修羅場中に決まってるじゃないですか! カムアウトしたことですし原稿していいですよね? 駄目でもします新刊は落とせませんっ!」
「あぁもう、原稿なり何なりすればいい…但しさっきのメモは使うなよ」

 ギンと鋭い視線を飛ばせば、いそいそとノートパソコンを出しながら菊は全力で視線を逸した。おいこら目を合わせろ、そして使わないと明言しろ。俺の威圧感など何のその、タブレットを接続した菊は作業に没頭し初めてしまう。
 高校の頃は漫画用紙にGペンやらホワイトやらを使っていたが、いつの間にかデジタルに乗り換えたらしい。トーン貼りを手伝わされたのも今やいい思いでかもしれない。そういえばあの漫画のキャラは俺とギルベルトに似ていたような気がするが、まぁ、きっと気のせいなのだろう。というかそうでないと羞恥心で死ねそうだ。
 身近にいる人間をモデルにするなと厳重に抗議したい。プライバシー権の侵害でそのうち訴えるぞ、という脅しは菊にはどれくらい有効なのだろうか。70%を越えてくるならば口にしてみる価値は十分にある気がするな。
 などと考えていたところで、控え目な着信音がメールを受信したことを告げる。パチリとフラップを開けて確認すると、メールはギルベルトからのものだった。3人で馬鹿騒ぎしているところでも撮って送ってきたのだろうか。そう思うが、ファイルが添付されている様子はない。
 俺は首を捻りながら開封し──そこに映し出された文字にびしりと固まった。いつもならばごちゃごちゃと書き連ねてくるのに、画面には1文だけがぽつんと表示されている。
 『助けて』
 ぞわりと背筋に嫌な感覚が走る。ギルベルトが俺に助けを求めてくることなど、ベッドの中以外では滅多にない。何か、あったのか。悪友2人と一緒にいながら俺に助けを求めなければいけないようなことが。
 慌てて立ち上がり、携帯だけを持ったまま玄関に向かう。

「お待たせ、俺特製のクリスマ……ヴェ?! ルートどうしたのー?!」

 途中でフェリシアーノと擦れ違い声を掛けられたが、返事をする余裕などある筈もなかった。


◆ ◇ ◆


「ばっかお前そんなんじゃねぇって言ってんだろ!」
「またまたぁ。恥ずかしがらずにお兄さんに話してごらん?」
「恥ずかしがるとかギルちゃんらしくないわぁ」
「だーかーらー」

 俺は目の前で繰り広げられる酒宴の様子を呆然と眺めていた。
 3人が座っているソファの周りには酒、酒、酒。大量の酒瓶が詰まれている。テーブルの上には食べさしの摘みが、こちらもまた大量に並べられていた。いい匂いに食欲がそそられる。
 そそられる、が、1つ拝借などとやっている場合ではない。俺はギルベルトからのメールで、ほぼ身一つでここまで来たのだ。あんな内容のメールを、寄越すから。だというのに今のギルベルトの様子はどうだ。
 『助けて』?
 悪友の執拗な絡みから助けろとでも言うつもりか。俺は若干、どころではないイラッとしたものを感じ、掌を机に叩き付けた。派手な音が鳴って、俺の存在が完全に目に入っていなかった3人が初めてこちらを向く。3人3様に実に出来上がっている顔で。
 ギルベルトは俺の顔を見るととろりと相好を崩し、如何にも嬉しそうな表情を浮かべた。ハートがころころと転がり出してきそうな様子にきゅんとしかけ、だが自制する。待て待て、可愛らしい表情に絆されるな俺。ふつふつと煮え滾る俺の心中を知ってか知らずか、目前の馬鹿3人は俺が口を開くより先にまた会話を始める。

「マジでルッツ来たぜーケセセ」
「だから言ったやろ、絶対来るって。ロヴィに会いたい時の俺の最終奥義やで!」
「ご苦労様、ルイ。お前も飲んでかない? 恨みつらみとかぜぇんぶ吐き出してやるから」

 アントーニョとギルベルトがげらげら笑い、フランシスは俺の肩に手を掛けてくる。斬り捨てるような動作でフランシスを払い除け、俺はギルベルトの前にずいっと進む。
 我ながら険のある顔になっていると思う。それを何とかポーカーフェイスまで戻し、唇に笑みを乗せて、俺はゆっくりと口を開いた。

「どういうことか説明してもらおうか、兄さん」

 ひいっ、と情けない声を上げてギルベルトがアントーニョの後ろに隠れる。酒気で火照っていた顔は一気に青褪めて、白紙のように白くなっているのが哀れみさえ誘った。だが、そう、自業自得というものだろう。手心を加えてやる気は微塵も起きない。
 ふるふるふる、怯えた小動物のように震えながら、ギルベルトはアントーニョの体の陰から俺を見る。目が合うとぴゃあっと飛び上がって首を引っ込めるのが、また何とも言えなかった。蛇に睨まれた蛙、いやライオンの群に追い詰められた兎か貴方は。楽しく苛めてみたくなるのだが、俺は楽しくねぇ!と怒鳴られるのだろうな。しかしそれもまたいい。ギルベルトならば何でも美味しいものだ、うむ。
 妙な納得をして笑みを深くする俺に、ギルベルトが投げ掛けてくる視線は恐怖でしかない。アントーニョはこっわい顔やーと馬鹿のように笑っていた。いや、ようにというか馬鹿か。何が「俺の最終奥義やで!」だ。俺は強かに肝を冷やしてすっ飛んで来たんだぞ。悪ふざけにも程がある。
 助けて、なんて、そんな風に。そんな風にギルベルトが誰かに頼るようなことは、もう二度となくていい。
 俺の視線に耐えられなくなってきたか、ギルベルトはしどろもどろに説明を始める。

「メール送ったのは俺じゃなくてアントーニョだぞ、お前が飛んで来るって言って勝手に、」
「訂正を入れればいいだろう」
「だって携帯取り上げられて…」

 言いながらギルベルトが視線をするりと滑らせる。俺もそちらに目を向けると、フランシスがにこやかな笑顔を浮かべていた。手には素っ気ないまでにシンプルな携帯──ギルベルトのものだ。片隅に貼られたごくごく小さな小鳥のステッカーがそれを密やかに主張している。そうか、取り上げられていたなら訂正出来なかったのもしょうがないな。
 などと、俺が言うと思ったのだろうか。いいや思っていないのだろうな。その証拠にギルベルトはまだ冷や汗を納めていない。こほんと咳払いをして息を吸い込む。

「そこに直れ馬鹿3人共!!」

 吐き出した声は空気をビリビリと震わせ、ギルベルトは勿論のこと、フランシスとアントーニョを居直らせるにも十分な威力を持っていた。


◆ ◇ ◆


 それから1時間程至極正当な理由から説教を続け、全員から涙ながらに謝罪されて俺は漸く怒りを納めた。理不尽なものが全くなかった訳ではないが、我ながら抑えた方であると思う。言いたいことの半分も言葉にしなかったのだから、感謝してもらいたいものだ。
 ふぅと溜め息を吐き、俺は脚を組み替える。ギルベルトを連れて、俺は家に帰ってきていた。今はリビングのソファに座って、隣のギルベルトが居心地悪そうにしているのを眺めている。
 財布やらはフェリシアーノの家に置いたままだが、そのままでもすぐに困ることはない。後でメールをしておいて明日取りにいけばいいだろう。
 視線が合うと、ギルベルトはやはりびくりと体を震わせる。小動物のようで可愛いと思うのだが、同時にその反応は昔の記憶を蘇らせた。
 1人で思い詰めて傷付けてしまった、数年前のこと。あの時もギルベルトは俺と目が合う度にびくびくしていた。今の怯えの原因はそれとは全く違ったものである。しかし余りいい気はしない。
 そりゃあぴるぴる震えるのは可愛らしくてしょうがないが。泣かせて乱れさせてやりたいとつい思うのだが。

「兄さん、そう怯えないでくれ」
「だってお前、まだ怒ってんだろ」

 軽く視線を逸らしながら紡がれる、潜めた細い声。それは俺にとって苦いものしか思い出させず、心がもやりとする。ギルベルトの中では俺はまだ怖い存在なのだろうか。
 細かいことにはこだわらない性格だが、あれは早々忘れられるようなものでもないだろう。俺はそれだけのことをした。どれだけ頭を下げて謝っても、してしまったことが消えてなくなる訳ではない。たとえギルベルトが許すと言って笑ってくれたとしても。
 それは分かっている。分かってはいる、けれど。眉根を寄せると反射的にギルベルトは身を竦ませる。むらっと、ではなくむっとくる。俺はもうあんな真似はしないのに。二度と、ギルベルトをあんな目には合わせないのに。信用されていないのかと思うと少し悲しい。
 俺はいつもより間を空けて隣に座っているギルベルトをぐいと抱き寄せる。声を上げられるより先に、その唇を口付けで塞いだ。腕の中の体は一瞬強張って、それからゆるゆると力を抜いた。長い睫毛が伏せられるのを見ながら俺は口付けを深くする。
 乱暴な手段だとは思う、けれど俺の場合はこちらの方が感情を伝えやすいのだ。どうにも口下手で、上手く気持ちを表現することが出来ないものだから。
 込み上げる愛おしさを感じながらそっと顔を離す。ギルベルトははふ、と息を吐いて肩に額を預けてきた。すりすりと犬や猫がするように首筋に懐かれる。自然と笑みが浮くのに任せながら、俺は腰に回していた腕の力を緩めた。

「に、」
「ごめん。心配、させた」
「心臓が止まるかと思ったぞ」
「反省してる。でも、来てくれて、嬉しかった」

 独り言を呟くように囁かれる言葉、俺も同じようにして舌に音を乗せる。
 そろりとギルベルトの指が動いて、俺の腕に触れた。シャツの袖から垣間見える手首に青黒い痣はない。あの頃の俺はもういない──あの頃のギルベルトももう、いない。ずっとずっと抱えていた気持ちは通じて、愛しい人はこうして俺に応えてくれる。
 ひょんなことで擦れ違って喧嘩をして、お互いに口を利かないこともある。でもそれはほんの僅かな時間、ちょっとしたトラブルで、俺たちの仲を裂くには至らない。
 ふと目を上げればそこにいる。手を伸ばして抱き締められる。顔を寄せて、その耳元で愛を告げられる。それはとても幸せなことだ。とてもとても、掛け替えのないことだ。
 側にいるのが当たり前過ぎて、感覚が麻痺していたあの頃とは違う。俺もギルベルトも変わった。変わって失ったものがあれば、得たものもある。得たものの方がきっと沢山だ。俺たちの関係はこれからも続いて、その限り得るものは増えてるから。
 思い出を、愛を、積み重ねていく。一緒に歩んでいく。手を繋いでどこまでも、どこまでも。叶うならば永遠に。
 自然に深く抱き合えば、カシュと微かに金属音が上がった。それはペンダントが触れ合った音だ。揃いの十字──幼い頃の思い出であり、約束の証。
 ギルベルトが俺を見て微笑む。俺もつられるようにして笑みを浮かべる。もう一度重ねた唇は甘く、ついでに濃厚な酒の味がした。
 雰囲気がないのはいつものことだ、俺はギルベルトに飲み直しを提案する。
 秘蔵のワインと、それから作っておいた特製のシュトーレン出して、細やかな乾杯を。何せ今日はクリスマス、日が暮れた後は恋人たちの時間だ。






チョッピさんのお誕生日祝いでした。Happy Birthday!