嫌だ嫌だと泣くギルベルトの最奥に欲を注ぎ込む。口でどう言おうと体はしっかり感じているのだから、本気で嫌な訳でもあるまいに。
「なん、で……」
微睡みに引き摺り込まれながら、ギルベルトが呟きを漏らす。彼の体はそのまま脱力してシーツに沈んだ。
ルートヴィッヒはずるりと自身を引き抜くと浴室に向かう。コックを捻って頭から冷水を浴びれば、少しだけ気分が落ち着いた。涙を湛えて自分を見つめてくる紅い瞳。それに煽られてつい無理をさせてしまう。しかもあんないい声で啼くなんて、本当に止めさせたいのか分かったものではない。ルッツ、そう自分を呼ぶ声は甘く掠れている。
ルートヴィッヒは濡れて額に張り付いた前髪を掻き揚げるとシャワーを止めた。適当にズボンを引っ掛けて、濡らしたタオルを持って二階に上がる。ギルベルトは部屋を出た時と同じ姿勢で眠っていた。
「兄さん…」
軽く眉間に口付けて、ルートヴィッヒはどろどろに汚れた体を拭いてやる。自分の出したものを掻き出す為に後孔に指を忍ばせると、ギルベルトはひくりと体を震わせた。 しかし目覚める気配はない。
白さが目立つ体は、すんなりしているが決して華奢ではない。だが少し、痩せた、だろうか。壊れ物を扱うように眠るギルベルトに触れながら、ルートヴィッヒは考える。色白なせいで以前から顔色が悪く見えることがあったが、この頃は実際に余り調子がよくないようだ。浮ついた噂もとんと聞かなくなった。それはいいことだと思う。
けれど日増しに覇気がなくなっていくのは、闊達とした兄を好いていたルートヴィッヒにとっては複雑だった。この腕に抱く度、彼が儚げになっていく気さえする。漸く手に入れたのに。それなのに、喉から手が出る程に欲しかった彼は、どこか違う場所へ行ってしまう。
「何で、なんて」
傷付けたかった訳ではない。虐げたかった訳ではない。ただ抱き締めて、愛を囁いて、甘やかな時間を過ごしたかった。しかし、ルートヴィッヒはそんな風にギルベルトを愛せなかった。
逃げようとするから組み敷いて。拒絶するから縛り付けて。嫌だと涙するから、犯した。
それはほとんど衝動的なもので、後からふと済まなく思う時が多い。そんな風にしたいのではないのだ。いつも自分は不器用で、上手く立ち回ることが出来ずにいる。そんな自分が不甲斐なくてしょうがなかった。
「俺の方が知りたい」
呟いて、ルートヴィッヒは目を伏せる。
どうして兄を愛してしまったのか。どうして優しく触れられないのか。どうして、どうして、どうして。
繰り返す自問に対する答えは出てこない。止めどなく溢れ出る疑問は頭の中で堂々巡りを繰り返す。ルートヴィッヒに分かるのはただ、自分は狂いそうな程にギルベルトを愛しているということ。それだけだった。
劣情を煽る紅
(その目が俺の愛を歪めていくのだろうか)