ねぇルート、ルートヴィッヒ。何で俺を見てくれないの? 今ルートの目の前にいるのは俺なのに。
何で違う場所を見ているの? こんなに側にいるのに。
こんなに、好きって伝えてるのに。こんなに、俺はルートを愛してるのに。ねぇ答えてよ、俺にも分かるように説明して。そうじゃなきゃ許して、あげない。
「っ、フェリ…」
顔を上げさせると、ルートは掠れた声で俺の名前を呼んだ。綺麗な碧い瞳が俺を見つめる。けど、そこに自分が映っていないことを、俺は知ってる。知りたくなんてなかった。
でも知っちゃったんだから、しょうがないよね。ルートの目が見てるのはいつだって、あの人。誰と何してたって、頭の半分くらいであの人のことを考えてる。俺が知らない笑顔を見せるのも、愛を囁くのも、全部あの人に対して。俺には絶対に向かない。一欠片だって、向けたりしてくれない。
本当は分かってるよ、ルートが悪いんじゃない。分かってるけど、俺にはこうするしかないの。だってルートは俺が目の前にいたって、ちゃんと俺のことを見てくれないんだ。俺と過ごす時間はあの人と会えない間の暇潰しみたいなもの。それには何の価値もなくて、相手は俺じゃなくても全然よくて。
でもそんなのは、もう嫌だ。ねぇルート、ちゃんと俺のこと、見て?
「何で目を合わせてくれないの? ちゃんと見てよ、俺のこと見てよ!」
「、フェリ、…!」
ぐ、とルートの首に指を食い込ませる。俺はそこまで力が強くないから、精々赤い跡がつくくらいだ。でも気道を狭められれば当然のように苦しくなるから、ルートは息を詰めた。続く筈だった言葉は音になる前に消える。
言い訳なんか聞きたくないの。ねぇルート、ちゃんと答えてよ。俺の目を見て答えて。あの人のこと見ながら、あの人のこと考えながら、答えたりしないで。嫌だよ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
何で、どうして、ルートはそんなにあの人のことが好きなの? 愛しているの?
俺には分かんないよ。懇切丁寧に説明されたって分かりたくないし、きっと分かんないけど。答えて。俺の質問に答えて。ちゃんと俺を見てくれなきゃ、嫌だ。
「ルート、愛してるの、凄く」
縋りつくようにして言う言葉はいつだって、ルートには届かない。だから俺は酷く失望しながら笑う。
ねぇルート、いつになったらちゃんと俺のこと見てくれるのかな。いつになったらちゃんと答えてくれるのかな。いつになったらちゃんと、あの人じゃなくて俺のこと、俺だけのこと見てくれるのかな。
心配しなくても大丈夫だよ。それまでずうっと閉じ込めて、離してなんかあげないから。それでいつの間にか皆に忘れられちゃえばいいんだ。あの人にだって。そうしたらルートのことを覚えてるのは俺だけになるから、ちゃんと俺のこと見てくれるようになるよね。
ねぇ、ルート、俺の愛しい愛しいルートヴィッヒ。
正しい愛の歪み方
(死ぬまで、ううん、死んだってずっと愛してあげる)