※唐突にパロ。奴隷×ご主人様です。これよりも前の話。
アーサーのキャラ崩壊が凄いので、元ヤンとかツンデレがいい方はブラウザバックお願いします。
出会いはとても、強烈だった。
入れられた檻の中でどうにか出られないものかと孤軍奮闘していた俺の前に、彼は現れた。華奢なヒール、繊細なレースのストッキング、華麗なシルクのドレス、頭に乗せられたミニハット。全てが彼を引き立てる為だけにそこに存在しているようだった。薄暗い屋内で、彼は光を放っているようにさえ見えた。身に着けているものは全て最高級品で、何より彼がとても美しかったから。腰元まで垂らされた銀糸もルビーみたいに煌めく瞳も、これまでに見た何よりも美しいと思った。
見惚れている俺を余所に、彼の絹手袋に包まれた手はひょいと伸ばされる。持っていた扇が檻の間から差し入れられて、俺は顔を上げさせた。決していい顔をしていなかったように思う。
けれど彼は笑って、本当に綺麗に笑って、言ったのだ。気に入った、と。
それから彼は奥に消えて、暫くして戻ってきた時には隣に商人を連れていた。渋々といった感じで檻の鍵が外され、俺は外に出された。事態が飲み込めていない俺に、彼は一言。
今からお前は俺のものだ。
そう、言った。その時から彼は、俺の「ご主人様」に、なったのだ。
「ん……ふ、ぅ…」
ぴちゃりと舌を這わせる。差し出された足に跪いてそうするのは、嫌でも何でもなかった。寧ろ触れられることに興奮しさえした。白雪を重ねたような肌はともすれば非人間的ですらある。
そろりと視線を上げると、椅子にゆったりと腰掛けた彼の全身を見ることが出来た。何か考え事でもしているのだろうか、紅眼は虚空に投げ出されている。己に焦点を結んでいなくとも、その瞳はやはり綺麗だった。つい食い入るように見つめてしまう。あぁ何て、美しい人、だろう。
地獄のような人間の底辺の世界から奴隷商なんかに拾われて、どうなってしまうのかと思ったけど。結果に辿り着いてみれば、俺は随分と幸運だった。寝る場所にも食べる物にも困らないし、雲の上の人にこうして触れられる。未だに夢なんじゃないかと思うけど、どんな痛みを感じても目は覚めなかった。確かな現実だということにホッとする。今の俺は多分、彼を取り上げられたら生きていけないから。
と、ふっと息を吐いた彼が不意にこちらに意識を向けた。一心に奉仕している俺を見て、ゆっくりと目が細められる。
「何て顔してんだ、アーサー」
くくっと喉が鳴らされて、俺が舐めていない方の足が後頭部に乗せられた。足に無理矢理キスさせるみたいに体重を掛けられる。俺はそれに素直に従う。
視界を満たす滑らかな肌、やっぱり何か特別な手入れをしてるんだろうか。それとも生まれつきこんなに綺麗、なんだろうか。もしそうだとしたら神様ってのは随分と不平等主義者だと思う。だって彼にばかり、二物も三物も与えてる。その気持ちは分からなくも、ないけれど。
俺が視線を外せないでいると、彼はまたくつくつ笑って両足を退けた。足の先がごく自然に伸ばされて、俺のペニスを撫でていく。彼が触れていると思うと、元々反応していたはそこは余計に反り返った。
「もうこんなにしてんのか、足舐めてただけで?」
「ぁ、あ…ご主人様…」
「全くどうしようもないなお前は…もう突っ込みたくてしょうがねぇんだろ」
ぐりぐり足裏で刺激されて俺は堪らずに体を震わせた。彼は挑発的な表情でドレスの裾をたくし上げて、露になったそこを俺に見せ付けるようにする。ごくりと喉が鳴ったのは、不可抗力だった。
あぁ、だって──何だって穿いてないんだろう、この人は。大きく開かれた足の奥、彼の秘所は何にも覆われていなかった。緩く頭を擡げたペニスも淡く口を綻ばせたアヌスも、惜しげもなく明かりの下に晒されている。彼はにこりと笑うと、舐めて濡らした指をアヌスに忍ばせた。指先が飲み込まれて指の中程まで到達し、ぐちゅぐちゅ水音を立てながら出し入れされる。
「あ…ぁ、は……んんっ」
肘掛けに引っ掛けられた足が時折ひく、と痙攣する。逸らされない視線に絡め取られて、俺は彼を見つめ続ける。
触れたくてしようがなかったけれど、それはまだ許されなかった。それを酷く口惜しく思う。触れることが出来る距離に、いるのに。これじゃあ生殺しだ。でも俺は主人に待てを言い渡された飼い犬みたいに、というかそのもので、足下で新しい命令を待つ。涎を垂らして尻尾を振って、美味しいのなんか分かりきってる餌を前にして。最終的には与えられると知っている、から。
我慢が利かなくなるのは何も俺だけに言えることじゃない。とろとろと瞳を蕩かせた彼は、欲情に濡れた視線で俺を捉える。
ほら、お許しだ。
「アーサー…来い、」
「はい」
俺は従順に頷いて彼に覆い被さる。肩口に腕が回されて抱き締められるような形、吐息が首筋を撫でていく。先を押し入れると彼の体はびくりと強張った。けれど抵抗などされる筈もなく、俺はずるずると根本までペニスを突き立ててしまう。彼は目を伏せて、酷く満足そうに深い息を吐いた。
上擦る声はどろどろに溶けたチョコレートみたいに甘く甘く蕩けている。それに煽られる、先を促される。俺は求められるままに彼を貫き、抽挿し、奥まで犯し尽くす。それはそう命じられたからで、同時に、俺自身もそうしたかったからだ。
色白の、華奢で滑らかな体。俺も小柄な方だが、痩せ過ぎていたのが幾分か改善したお蔭で、彼の方が明らかに細い。元々の体格や体質が関係しているのだろう。その決して男らしい魅力を備えてはいない体は、異様なまでに俺を魅了した。こんな背徳的な行為を、正当化してしまえる程に。
「ふ、ぁ…あっ、あ、ああぁっ」
「っ、ご主人、様…っ」
「駄目、だ…まだイく、な、ぁっ」
切羽詰まった俺の声に彼はふるふる首を振って、伸ばした指をペニスの根本に絡めてくる。その刺激は確実に俺を追い上げて、それでも指に阻まれて達することは許されない。荒い息を繰り返して何とか込み上げる衝動をやり過ごす。だというのに彼は先を強請るようにきゅうきゅう締め付けてきた。そんなことをされたら我慢しようにも出来やしない。
けど彼の望みは俺の望みで、俺はそれを拒む術を知らない。だって、本当に。彼は俺にとって、救世主みたいな人だから。生きる為に必要なものを全て与えてくれる人だから。俺に出来ることがあるなら何だってしたい。それで彼が少しでも喜んでくれるなら、嬉しい。
そう思うのはごくごく自然なことで。いつの間に囚われたのかなんて、考える気にもならなかった。そんなのは関係ない。大切なのは彼が俺を欲してくれるという、その事実だけだ。
「ご主人様…、ご主人さまぁ…っ」
「ん…、ぁ、ア、ーサー…」
掠れた声に名前を呼ばれると、体よりも心の方が余計に煽られた。決して口には出せない言葉、許されてはいないそれを、言ってしまいそうになる。彼の、名前。愛して止まない、彼の。
だけど音になる寸前で俺は口を噤む。それくらいの分別は、まだ残っているから。彼の側にいたいなら、彼の望まないことはしてはならない。だって俺を捨てることなんか、彼にとっては赤子の手を捻ること程に簡単なんだ。そんなことをされたら自分はどうなってしまうのか──恐ろしくて最後まで考えたことはない。
「うぁ、は、ぁっ、あああっ…イく、イっちゃ…───っっ!」
ぞくりぞくりと体を震わせて、彼は感極まった声を上げる。白濁が零されるのと同時にするりと指から力が抜けて、俺は中に突っ込んだまま塞き止められていたものを吐き出した。酷く幸せそうな笑みを浮かべる彼が、そっと俺の頬に指を這わせてくる。消えゆく余韻に浸りながらその指に口付けると、蠱惑的な紅は笑みを深くした。
出会いはとても、強烈だった。
思えばあの時、俺は一瞬で恋に落ちていたのだと思う。でなければこんなこと、本当に、頭がどうにかしてるとしか考えられない。
彼が去ってしまった部屋の中で、俺はそっと言葉を舌に乗せる。
ギルベルト。
一度も呼んだことのない彼の名は、俺には随分と分不相応であるようだった。それでも側にいたいと思う、彼のものでありたいと思う。許されるならば、そう、永久に。
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